トラリピで有名なマネースクエア(マネースクウェア・ジャパンから社名変更)が新機能「トラリピ1(ワン)クリック」をリリースしたので紹介します。

最初に結論を言っておくと、「テクニカル」を使った相場予測に基づいて「マネースクエア側が作った」3つのモデルから選ばせるという性質上、悪いパフォーマンスとなるものがほとんどだろうと思います。

テクニカルをベースにしたシステムトレードは、パフォーマンスが悪いことから昔から全然人気がないのですが、「トラリピ1(ワン)クリック」はそれと同等の金融商品というイメージだと思います。

マネースクエアのサイトにログインすると「トラリピ1クリック」の特設ページがあり、そこに以下の3つのシステム(モデル)が表示されています。
  • タイムモデル
  • ロジックモデル
  • トレンドモデル
これを選択すると、マネースクエアが作成した設定がそれぞれ1つだけ表示されます。(下図の左)

トラリピワンクリックの概要
 ↑引用元 https://www.m2j.co.jp/toraripi/1-click.php

想定資金はデフォルトでは100万円になっていますが、自分でクリックすることにより50万~1000万円に変更できます。

「1クリック発注設定」というバナーをクリックすると、その設定が入力されトラリピ発注画面(上図の右)に移行し、さらにその画面をクリックしてようやく注文が発注されます。

(なので、厳密に言うとクリック回数は1回ではないので、「1クリックで設定完了」というキャッチコピーは誇大広告と言っても過言ではないと考えます。)

なお、トラリピ1(ワン)クリックは単に設定を自動入力するだけの機能なので、入力された設定を手動で変更することも可能です。

デフォルトではどの設定にもロスカットが付けられているため、それが嫌な人は手動で外す必要があります。

各モデルの概要

マネースクエアのホームページには以下のように記載されています。

引用開始
タイムモデル:様々な時間軸のチャートをもとに分析
トレンドおよびレンジの観測指標として、主に「ボリンジャーバンド」「スパンモデル」「パラボリック」「DMI」「スローストキャスティクス」を使用し、時間軸を変更しながら観測するマルチタイムフレーム手法を基に分析しています。

ロジックモデル:オプション市場の緻密なロジックを活用
「相場は確率に賭けるゲーム」と言われています。トラリピと相性の良い、レンジ相場向きの通貨ペアをテクニカル指標で分析・選択。そこにオプション市場で使われているブラックショールズ方程式により確率(50%)を算出してレンジを表示しています。

トレンドモデル:複数の分析手法から相場の上昇・下降を予測
トラリピをより有利に仕掛けるために、新値三本足、標準偏差、ボリンジャーバンドを使い、通貨ペアの方向性を想定し、合わせてトラリピの「売り」「買い」判定を行います。例えば、上昇傾向が認められる通貨ペアの場合は「買い」仕掛けとし、想定レンジは、ストップロスの水準から判定日始値までの距離を1:2でトレンド方向に設定します。
引用終わり https://www.m2j.co.jp/toraripi/1-click.php

いずれのモデルもテクニカルを利用しています。

また、マネースクエアのホームページには説明されていませんが、実際にはいずれのモデルも想定運用期間が1ヶ月となっており、月末時点で翌月の相場を予想して月初めにモデルを作り変えていく(月1回の更新)という仕様のようです。

上の説明を見ても実際にどのようにして作られた設定なのか理解できないですし、ブラックボックスと言っても過言ではないと思います。
一応トラリピが使われているものの、昔からあるテクニカルベースのシステムトレードと同様の金融商品と考えるとよいでしょう。

トラリピ1(ワン)クリックの説明ページには詳細に書かれていないものの、実際に利用者がシステムを選択する画面にはこのシステムの「オススメの理由」が記載されています(私は全く同意できませんが、マネースクエアにとってはこの設定が「オススメ」なんだそうです。)。

そこには
 ①通貨ペア、売買の選択理由、
 ②想定レンジについての簡単な説明、
 ③レンジアウト時の対応案(ロスカットして終了など、ありふれた内容)、
が記載されており、アナリストがよく書くような単純なテクニカル、ファンダメンタルズといった内容です(数行程度)。

各モデルで一つだけ設定が記載されており、12月1~31日は以下の設定となっています。

  • タイムモデル:ドル円、買い、発注レンジ111.80~114.00円(利食い幅:0.1円)
  • ロジックモデル:ユーロ/米ドル、売り、発注レンジ1.1180~1.1510(利食い幅:0.0022)
  • トレンドモデル:カナダドル/円、売り、発注レンジ82.85~85.91円(利食い幅:0.18円)

通貨ペアまでマネースクエア側が1つづつに限定していたのはちょっと意外ですが、上記の3つだけとなっています。

注意点:金融業界の営業手法を見破るべし

上の説明で「ブラックショールズ方程式」と聞いて「何かよくわからないけど凄そう!」と思った人は要注意です。FX業界に騙されやすいタイプです。

「マルチタイムフレーム手法」、「ブラックショールズ方程式」など、初心者が見ると「何か知らないけど凄そう!」と思うような難解な用語をあえて使っている(しかもその詳しい説明もない)ところが明らかに不親切であり、初心者が儲かると誤解する恐れがあります。

金融業界がよく使うこの手の営業手法(あえて難しい用語を混ぜて説明する等)に騙されないよう注意して下さい。

はっきりと断言しておきますが、こうした難解な理論・手法を含め、どんなに高度な学問、技術を使っても「投資に必勝法はない」です。

トラリピワンクリックは単にマネースクエアの推奨設定を簡単に入力するだけのものであり、そこで推奨されている設定は従来からマネースクエアのホームページなどで紹介されていたものと大差ないです。

「ブラックショールズ方程式」を使っているから勝てるなどと勝手に思い込まないよう(思い込まされないよう)注意して下さい。

最近ではAIを使った営業文句もよく使われていますが、当然に必勝法ではありません(顧客にAIによる自動売買などの金融商品を買わせれば自社に継続的に手数料収入をもたらすという意味では、「金融業界にとっては必勝法」ですが、顧客が勝つ可能性が高いものではないです。)

「相場に絶対はない」ということも覚えておいて下さい。

トラリピワンクリックのメリット

設定が簡単

トラリピは通貨の売買の選択だけでなく、トラップ本数や発注レンジ、決済トレールの有無など、トラリピ初心者には非常に難しい項目をたんさん決定していく必要があります。

多くの初心者がここで断念する恐れがあるので、ワンクリックで簡単にマネースクエアのお勧め設定が利用できると言われれば、それに飛びつく初心者も多少はいると思います。

ただし、その投資の意味やリスクすらわからない人を投資に引きずり込む恐ろしいツールであるとも言えることに注意して下さい。

トラリピ1(ワン)クリックによる設定内容を見ましたが、初心者向けの低リスク・低リターンな設定ではないと思います。(下記デメリット参照)

ループイフダンの方がはるかに簡単で初心者に優しいと思います。

細かい調整ができる

トラリピワンクリックは単なる入力補助ツールなので、入力された後に自分の好みの設定に変更できます。
この点は個人的には高く評価します。

トラリピは細かい設定ができるというのが最大のメリットであり、その点を生かしているからです。
ただし、自分で調整ができるような人はトラリピワンクリックを使う必要がないので、残念ながら実用性が高いとは思いません。

トラリピワンクリックのデメリット

トラリピを停止するタイミングが難しい

全てのモデルの想定運用期間が1ヶ月程度となっており、仮に1ヶ月の決済利益がそれなりにあったとしても含み損のあるポジションが残っていると、それを決済するタイミングによりトータル損益がマイナスになる可能性があります。

通常、トラリピやループイフダンのような取引ではシステムを停止するタイミングが難しく(買いトラリピなら高値更新時、売りなら安値更新時が理想。この記事を参照。)、想定運用期間をあらかじめ決定しておくというのは難易度が上がるだけの愚策であり、トラリピやループイフダンを知らない素人がよくやる失敗例です。

そのような重大な欠点のある商品をマネースクエアが自信満々にアピールしている点に強い疑問を抱かざるを得ません。

想定レンジが狭い。300~400pips程度

レンジ上限を抜けて勝ち逃げならよいですが、レンジ下限を抜けて損切りとなった場合の損失が大きく、期間内の利益では到底まかなうことができません。

想定レンジが狭いため、裁量トレードのように短期で勝ち、負けが確定することとなり、長期で見れば負けが多くなるという裁量トレードと同じ負けパターンになる可能性が高いです。

トラリピやループイフダンのようなシステムでは損切りしないよう長期安定運用をすることが王道なのですが、トラリピワンクリックはそういう金融商品ではないようです。

結局、マネースクエアお抱えのアナリストの作ったシステムトレードに乗っかるか、否か、という選択です。
「投資の常識」なので知らない人は絶対に覚えておいて欲しいのですが、アナリストの言う通りにトレードするというのは典型的な負けパターンです(下記リンク参照)。投資は自分の頭で考えて行うべきだと断言します。

ループイフダン・トラリピにお勧めのテクニカル指標と注意点
テクニカル・シストレのデメリット。テクニカルで最も重要なこと

テクニカルを使っている

テクニカルをベースにしたシステムトレードは「業者必勝、顧客必敗」です。

また、アナリストなど、為替分析のプロとしてメディアで紹介される人らの実態は、相場を分析するプロではなく、相場を分析したように見せかけて顧客を扇動し手数料収入を稼ぐプロだと言うことを忘れないで下さい。

他人の言うことを鵜呑みにしてトレードする人は必ず失敗します。
上記リンク(テクニカルの記事)で詳しく書いているので一読を勧めます。

ストップロスがついている

手動で外すことも可能ですが、あらかじめストップロスが設定されています。

想定運用期間が1ヶ月と短いので、確かにそのような期間制限をつけるならストップロスをつけるのも一つの合理的戦略である可能性はあるものの、そもそもトラリピで短期運用すべき理由がありませんし、想定運用期間内の収支がプラスで終わる可能性が高いとは言えません。

トラリピやループイフダンのような手法では長期安定運用を目指すのが王道です。
短期レンジより長期レンジの方が予想しやすく、損切りのリスクを低減できるためです。

あえて「短期運用」という邪道に進むべき理由があるとは思いませんし、マネースクエアからの説明もありません。

私はトラリピやループイフダンの手法を熟知している自信がありますが、これらの手法はほとんどの場合、短期運用に向くものではないと考えます。
この記事でも書いた通り、トラリピやループイフダンでは損切りを繰り返す運用より、損切りしない運用の方が効率よく稼げます。

相場予測に強い自信がある時に、一時的にリスクをとって短期運用するという戦略はあるものの、ハイリスク・ハイリターンであり、長期に何度も続けるようなものではありません。

トラリピワンクリックのような短期運用を毎月続けるというのは、トラリピやループイフダンのような手法のメリットを台無しにするものであり、私は絶対に推奨しません。

(なお、私見ですが、トラリピワンクリックで短期運用を勧めていることに関し、マネースクエアにとってのメリットを考えると、短期運用だと想定レンジが小さくなるため各注文の間隔・利食い幅なども小さくして注文回数を増やすことになるのですが、注文回数が増えるとその都度手数料やスプレッドのコストが発生し、利用者にとってはマイナスですが、FX業者にとっては利益増となります。

本当にそのような背景から短期運用をしているかは不明ですが、マネースクエアに限らず金融業者がこうした本音を認めるとは思えないので、利用者が自分の頭で考えることを勧めます。しょせん私の単なる推論であり、事実かどうかは断定できません。単に従来から月1回、推奨設定を公開していたからその慣例を続けているだけかもしれませんし、私が考えるデメリットに気づいていないだけの可能性も一応あります。

いずれにせよ、この例に限った話ではなく、金融業界とユーザーの利益は相反することがほとんどなので、業者の言いなりに投資するのはハイリスクだと覚えておいて下さい。)

注意:「客観的」な分析手法について

マネースクエアのホームページには、
「トラリピ1クリック」は、客観的な分析手法に基づいて制作されており、内容の正確性を保証するものではなく、あくまでも参考情報のご提案のみを目的としております。https://www.m2j.co.jp/toraripi/1-click.php
と記載されており、テンプレ注意書きに見えますが誤解される恐れがあるため一応コメントしておきます。

トラリピワンクリックは、マネースクエアお抱えの人がテクニカルやファンダメンタルズを分析して設定を決定している時点で「客観的な分析手法に基づく」ものにはなり得ないので注意して下さい。

仮に使っているツール自体が「客観的な分析手法」だとしても、その使い方に必ず「主観」が入り込みますし、着目するファンダメンタルズ等にも「主観的」な要素が絶対に入ります。

月1回しか更新されない

相場状況は日々変わっていくのにトラリピワンクリックの設定は月初めにしか更新されません。

仮に月末時点での相場分析・推奨設定が適切だったとしても、その設定が1ヶ月の間ずっと完璧である可能性は極めて低く、多くの利用者にとって使い所が難しいものになると思います。

問題の本質は想定運用期間が1ヶ月と短いことにあります。
長期の設定も公開するようになれば、多少はマシになるかもしれません。

注意:金融業界の「推奨」は地雷

金融業界全体に言えることですが、金融業界の推奨する商品や設定というのは多くの場合、自社に都合がよいもの(自社の利益が大きいもの)を推奨しているだけです。
利用者にとって有用な商品や設定であることは非常に少ないです。

ランキングなどを使って実質的に推奨してくるパターンも多いので注意して下さい。
ランキング上位は本社の方針で営業が押し売りしてる商品が並んでいるだけということもザラです(投資信託などに多い手口)。

何度も言いますが、投資は自分の頭で考えるべきです。他人の意見を鵜呑みにした時点で負けです。

トラリピなのでスプレッドが大きい

もはや言うまでもないことですが、トラリピはスプレッドが大きいため、ループイフダンと同じ設定を作ってもループイフダンの方が利益が大きくなります。(この記事参照)

トラリピワンクリックの設定で投資すべきとは全く思いませんが、仮にその設定にしたい場合であってもトラリピで行うよりループイフダンで行った方が利益が大きくなります。

スプレッドもスワップも、ループイフダンの方が有利だからです。

★★★

以上、「トラリピ1クリック」について詳細に説明しました。

以前からマネースクエアのホームページなどで推奨設定が公開されることはあったので、トラリピワンクリックはそうした設定の入力を簡略化しただけとも言えます。

肝心の設定内容がツッコミどころ満載だったので長い記事になってしまいましたが、最大のデメリットは想定運用期間が1ヶ月であることなので、そのあたりが今後改善されていくことを期待します。

現時点では私がオススメできるような代物ではありません。
私のオススメ設定は「ループイフダン攻略法」を参照して下さい。 

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